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この風景と文章を見ながら聞きたい曲:Sinnerman by ニーナ・シモン

ぜひ音楽を聴きながらお読みください、楽しさ倍増するかも?です


「ねえねえパパ今日ねすごいの見たんだよ」

いつの間にか子供は成長していた

「お前何歳になったんだ」

「10歳よ、なんで覚えてないの?」

まあ、よし子さんが言うからそうなのだろう


今日のすごいのってなんだよ

「当ててみて」

「郷ひろみを見た」

「だれーそれ?」

そうか知らないか


「あなた古すぎ」

「じゃあ、宇宙人をみたんだろ」

「あたり」

何で当たるんだよ

そんなに軽々しく宇宙人がくるか


「何をしてた?」

「雲の間からおりてきてた、すごいよ雲の

間から光の道ができていた」

「他は?」

「羽を伸ばしていた」

「そうか、だれでも羽を伸ばしたくなることはあるんだよ」


やばいな、もう攻めてきたのか

あいつら怖いんだぞ

空から静かに地球を観察しているんだ

ビルを作ったり、工事をしたり

毎日通勤する人たちを追いかけまわしている


今日はだれがどこにいるのかもわかってるんだぞ

怖くなかったか?息子よ


「他にもいたよ」

「どんな宇宙人?」

「足がすごく長いの、海の上を歩けるんだよ、でね足が白かった」

「そうか・・・」

宇宙人か、とうとうきたか・・・



2018.5.23 18:00 お台場海浜公園内 写真・文 西宮光夏

この風景と文章を見ながら聞きたい曲:オキノタユウ by 和楽器バンド

ぜひ音楽を聴きながらお読みください、楽しさ倍増するかも?です


紫の道


どんなに一緒にいても好きじゃないこともあるのよ 

後味の悪い夢だった 


 いつもハンバーグを食べている人は

 ハンバーグが好きだからじゃないのか?  


サッカーを見に行く人は 

サッカーが好きだからじゃないのか? 


映画をよく見る人は 

映画が好きだからじゃないのか?  


温泉はどうですかー?動物園はどうですかー? 

口調を変えて言ってみたが無駄なようだ


さっきまでの雨がやんだから外に出てみた 

いくつかの出会いや別れがあることくらい 

わかっているのに 

大空の下一人で歩くのか  


いっしょにいったレストランも 

夕方歩いた海岸も 

一緒に見に行ったサッカーの試合も 


いつも一緒にいても好きじゃないこともあるのよ  

雨の後涼しい風が吹いている 

少し肌寒い 夢なのに本当の別れみたいな気がしてきた 


いつも一緒に歩いていた夢を傍らに  


そうだ、カタツムリはいつも紫陽花の葉っぱにいるけど

紫陽花の葉を食べることはないって 

よし子さんは言っていたな 

 まあ、よし子さんが言うからそうなのだろう 


いつもいっしょなのに

カタツムリは紫陽花が嫌いなんだ 

紫の道を歩くとそんな話を思い出した 


2018.5.22 18:30 お台場ヴィーナスフォート遊歩道にて 写真・文 西宮光夏

この風景と文章を見ながら聞きたい曲:Clean Bandit - Symphony feat. Zara Larsson

 ぜひ音楽を聴きながらお読みください、楽しさ倍増するかも?です


生を届けているのさ


どこから来たのか? 

聞かれたから答えたまでさ 

どこからでもいいだろう? 

僕がどこから来ていようと関係ないだろ? 


そんなことはない、だって君はここを 

荒らしているじゃないか? 

飛び回るたびに色々なものが交じり合って 

しまうじゃないか? 


そんなに悪いもんじゃない 

いやむしろ感謝してほしいね、僕は運んでいるんだ 

 何を? 春になればわかるよ、

いや夏のうちにわかることも あるんだ、きれいだよ 

 

混じって良いものなんて、ドとミとソくらいなもんだろう 

それか交響曲くらいなものさ 


世の中は音楽だけでできているんじゃないんだよ 

こうやって生を運びながら生かしてもらってる 

やつもいるんだよ 

きっと君にはわからないだろう? 

どこから来たのかをきにしているうちはね。  


君にこの辺りをうろつかれるのは困るんだ 

その足につけた大きな丸いのもどこかで拾ったんだろう  


拾ったとは失礼だな、ついてきたんだよ 

これから運ぶところさ 

そうして生をはぐくむんだ 

君にはきっとわからないだろう 僕

がどこから来たのかきにしているうちはね 


混ざりあっていいものは 

ドミソや交響曲以外にもあるってこと 

知らないうちはね 


2018.5.20 15:30 辰巳の森海浜公園 写真・文 西宮光夏

この風景と文章を見ながら聞きたい曲:USA   by DAPUMP

ぜひ音楽を聴きながらお読みください、きっと新しい発見がある?かもです。 


思い出はセピア色でお願いします


 「だから幻想なんだよ、本物の愛なんてありえないからね」  

まあ、よし子さんが言うからそうなのだろう  

でも、おかしいな、おとといはそんなこと言ってなかった 

あなたには帰る家がある、ばりのセリフを言われて 

まるで景色が一気に色あせるようだ 


そういえばこの前子供が生まれたって言ってたな 

でも、おかしいな今日は新しいバッグを持ってでかけた 

子供を2人とも僕に預けてだ 

世の中の男はこんな目にあっているのか 

と思うとぞっとしてしまう 


 そういえば昨日は僕のことをクラウディとか呼んでたな 

どうしたのかな 


ピンポーン、帰ってきた 

「ただいまダーリン」 

今度はダーリンときた  

妙に優しい時に気になるのは僕だけだろうか 

僕は世界を知らないからよくわからない 


 「oh!the baby is made lonely, and, I'm sorry.」 

 なんで子供に対して英語なんだ 

「ごめんねすぐご飯にするから」

 僕には日本語だ、なぜ日本語なんだ 当たり前か、こっちが  

「あのね、赤ちゃんじゃないんだから、あなたには英語は使わないわ」 

なんで思っていることがわかるんだ 

 僕の心の中の色は一気にさめた 


僕の心は英語圏を恨めしく思った 

いつの間にかアメリカを崇拝しているか? 

来るなら来いアメリカよ 

 でも、なんで僕の心の中は白黒なんだ  

「はーいできたわよダーリン」 

よし子さんは手早く僕のために料理を作ってくれた 


 せめてセピア色でもいいよ思い出だけは 

2018.5.19 18:30 お台場海浜公園内  写真・文 西宮光夏

この風景と文章を見ながら聞きたい曲:

Get Off of My Way feat. GEROCK by MAN WITH A MISSION

ぜひ音楽を聴きながらお読みください、楽しさ倍増するかも?です。


月と滝 


 買い物帰りにスーパーの外で  

まだ中で何かをやってるよし子さんを待ってたら

遠くから月が歩いてきた 


 そんなわけないよな 

 そう思っていると 高そうな着物を着た女性だった


 凛として髪を後ろで結った綺麗な女性だ  

黒地に黄金色の月の模様とその横に

水色の滝がデザインされている着物を着ていた 


 素敵な着物だな 

 真横に来るまで3秒、2、1なぜかカウントしている 

 すれ違う瞬間、僕の後ろから少年の乗った自転車が 

 急に現れその女性に接触したんだ 


 女性の腕から落ちた高価そうな黒いバッグは

一瞬地面で弾んだように見えた 

 バッグから荷物が溢れでたから 

 僕はとりあえず拾うのを手伝ったんだ 


 なんだこれ、おもちゃ箱か? 

 おはじき、パチンコ、ゴムボール、輪ゴムの束 

昔のおもちゃみたいなものがたくさん転がっている 

赤や青や紫、黄色、様々な色が混じり合って綺麗だ 


 一緒に飛び出したドリンクのカン 

落ちた勢いでフタがはじけたみたいで中から液体が

勢いよく吹き出していた よく見ると炭酸水だった 

 勢いよく吹き出す泡 


 ん?全てはじけるものばかりじゃないか  

僕は疑問に思いながらも

いそいそと落ちていたものを拾い集めた 


こんなものより、あの黄金色の月と水色の滝の着物の方が

気になっていたんだ 


 この炭酸はどうしましょうか? 

 体を起こして女性を見ると 

 そこに女性の姿はなかった 


 黄金色の照明と水色の滝 を見ながら 

 僕はしばらく呆然としていた

2018.5.18 18:30 台場2丁目マンション前 写真・文 西宮光夏


この風景と文章を見ながら聞きたい曲:Shape of you by エド・シーラン

ぜひ音楽を聴きながらお読みください、楽しさ倍増するかも?です。


あなたの子供よ


「思っていたより早く生まれたわ、あなたの子供よ」

僕にどうやら子供が生まれたらしい。

まあ、よし子さんが言うからそうなのだろう。

生命が形作る子供が生まれた。


「見て見て、生まれたばかりの割には髪の毛ふさふさでかわいいよ」

髪の毛がふさふさの赤ちゃんか、そりゃかわいいだろう。


「今度は女の子だったわ、とても軽くて華奢なの、そこがまたいいわ」

どうやら、子供は2人めで、最初の子は男の子のようだ。

子供よ、曖昧な記憶に君の体がよみがえる。

まあ、よし子さんが言うからそうなのだろう。


子は社会の宝ともいうから、大事に育てないとな。

時計を見ると夕方の6時をまわっていた。

ねえ、ちょっと散歩に行こうか。

言われるがまま、僕はよし子さんの後をついていく。


「まあ、きれいな夕日、ほーら見てごらん」

オレンジ色の夕日が、丸くもない曖昧な形で

僕たち2人と子供を同じオレンジに染めている。


「あの太陽はあなたよ」

生まれたばかりの子供に話しかけている。

「その横がパパとママよ」

子供は光り輝く社会の宝だ。


見上げた遠くの夕日がまるで

僕たちの間に生まれた光のように

建物の間にいた。

きれいだね。思わず言葉がでてしまった。

何も恥ずかしがることはない。思ったことは言おう。

相手がよし子さんなのだから。


 2018.5.17.18:30 夢の大橋から北を見て 写真・文 西宮光夏